親なきあと準備のロードマップ:幼児期編

小学校入学前に意識したい5つのこと
「親なきあとの準備って、何から始めればいいの?」
前回の記事では、全体の概要や準備の全体像についてお伝えしました。
今回はその続きとして、小学校入学までに意識しておきたいことを、5つの視点からご紹介します。
幼児期は、まだまだ先のことのように思えるかもしれません。
でもこの時期だからこそ、大切にしたい準備があります。
1. 子どもが「愛されている」と実感できる環境をつくる
私が何より大事だと感じているのが、「自分は愛されている」と子ども自身が感じられることです。
障がいの可能性を告知されたとき、多くの親が最初に直面するのは、子どもの特性を受け入れることの難しさです。
私も、長男が生まれた翌日にダウン症の告知を受け、眠れない夜を過ごしました。
そんな中、誰かに言われたこの言葉が今も心に残っています。
「赤ちゃんのうちに、たくさん抱っこして、かわいがってもらった子は幸せな人生になるよ。」
この言葉の通り、赤ちゃんの頃から「大事にされている」という経験が、その後の人生の土台になっていくのだと思います。
だからこそ、ぜひたくさん抱っこして、たくさん笑顔を向けてあげてくださいね。
2. 子どもに合った療育のスタート
障がいの特性によっては、発育や身辺自立の進み方に差が出ることがあります。
その子に合ったペースで、適切な支援を受けられるよう、早めに専門機関へ相談することが大切です。
我が家の長男は、内臓に疾患がなかったため、どの病院からも紹介を断られてしまい、途方に暮れた時期がありました。
そんな時、市の保健センターから療育センターや療育病院を紹介していただき、ようやく支援につながることができました。
地域によって制度やルートは異なりますが、「誰に相談すればいいか」を知っておくことが一歩目になります。
3. 障害者手帳(療育手帳)の取得
将来、障害年金や福祉サービスを受けるためには、障害者手帳の取得が非常に重要になります。
とくに知的障がいがある場合は、「療育手帳(東京では“愛の手帳”)」の取得が基本となります。
目安としては、3歳ごろまでには申請しておくのが望ましいとされています。
私自身、「差別されるのでは…」「保育園に入れないのでは…」と悩み、手帳取得をためらっていました。
しかし療育センターの先生から、
「つらいかもしれないけれど、これからの生活に必要な支援を受けるために必要な一歩です」
と背中を押され、2歳のころに初めて取得しました(当時は4度)。
その後、10歳ごろに再認定で2度となり、手当の金額も大きく変わりました。
診断書を書ける医師の選定や、児童相談所への相談も重要なポイントです。
4. 日常生活のスキル(身辺自立)の促進
いわゆる**「身辺自立」**と呼ばれるスキル——
食事・着替え・排泄などの日常生活の基本的な動作は、小学校入学までにある程度できるようにしておくと安心です。
わが家で特に意識したのは「おむつを外すこと」でした。
当時、「トイレで排泄ができること」が学校選びの判断材料になると聞いていたからです。
保育園入園後の3歳ごろには、パンツでの生活ができるようになりました。
焦る必要はありませんが、ひとつずつ「できること」を積み重ねていくことが大切です。
5. 夫婦で「どんな子どもに育ってほしいか」を話し合う
最後に、とても大切だと思うのが、夫婦で子育ての方向性を共有しておくことです。
学校や療育の選択肢が限られている中で、夫婦の考え方に違いがあると、就学相談などで迷いや対立が起こることがあります。
実際に、私の友人夫婦も教育や支援に対する考え方の違いから、就学前に大きなすれ違いがあったと話してくれました。
だからこそ、
- どんな子に育ってほしいか
- どのような支援を受けたいか
- 家族として、何を大切にしていくのか
を、夫婦で言葉にしておくことが、のちの判断に役立つのです。
幼児期の準備が、その後の選択肢を広げる
「え、これだけでいいの?」と思われるかもしれません。
でも実は、この5つの視点が、その後の進路・生活・支援の質に大きな影響を与えるのです。
何歳からでも始められますが、
「小学校に入るまでに意識しておく」ことで、未来の安心感はぐっと大きくなります。
次回は「学齢期(小中高生)の準備」についてお届けします。
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